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パワー/ナオミ・オルダーマン

この本はヤバいオブザイヤー金賞👏( ˘ω˘ )(語彙力)
感想ッ!書かずにはいられないッ!
エンタメとしてもフェミニズムSFとしても一種の思考実験としても楽しめて 話の続きが気になるあまりに 積ん読に定評のあるわたしですらイッキ読みしてしまうほど面白かった。

パワー

パワー

 

ある時代から同時多発的に女性だけに鎖骨のあいだにスケインとよばれる器官が発達し、電撃を発することが出来る能力が発現して
男性優位社会から女性優位社会に転換していく混乱を
ターニングポイントから5000年経ってすっかり女性優位になった世界での男性が、歴史小説という体で書くというメタ構造になっている。

主な登場人物は
・ロクシー 目の前で母親を殺されたギャングの娘。っょぃ
・トゥンデ 女性による革命運動を間近で記録する男性ジャーナリスト。イケメン
・マーゴット  政治的な野心を持っている女性市長。負けず嫌い
・ジョスリン パワーが不安定なマーゴットの娘。素直ないい子
・アリー 性的虐待をおこなっていた養父をパワーで殺し新興宗教を立ち上げる少女。謎の声が聞こえるが…?
・タチアナ パワーで大統領である夫を殺しベッサパラという新しい国を作る夫人。成金趣味がすごい

それぞれがそれぞれの思惑で影響しあっていく。
わたしが今まで読んできたり観てきたりして面白かったり興味深いと思ったエッセンスが詰まっていた。

女性がパワーを持つようになり男性を抑圧していくなかで、

わが国に居住する男性はみな、常にパスポートおよび女性保護者の氏名を捺印した公文書を所持するものとします
男性は金銭その他財産を国外に持ち出すことはできません
男性は自動車を運転することができない
男性は事業主となることはできない
男性だけであつまることは許されない
男性には選挙権は認められない

などの法律が制定されるのは間違いなく現実の女性に対する制限のミラーリングになっているし

発掘された壁画の「抑礼」(男性性器切除術 思春期に近づいた男児の陰茎の重要な神経終末が焼き切られる。この処置を受けた男性は女性のスケインによる刺激なしで勃起が不可能になる。また射精のたびに痛みを感じるようになる男性も少なくない)
は今でも行われている女性器切除ミラーリングになっている。

女がパワーを持つようになって以来 ニュース番組に出演する男女の役割がグラデーションのように変化していき 不満を訴える男性は降板させられ 代わりに入ったアシスタント役の若い男性がバカっぽく振る舞うようになったのが生々しかった。

男女逆転させただけでその現象が残酷に思えるなら、いま現実で女たちに行われていることはなんだろう?
男が残酷に扱われるこの作品がディストピアと感じるならば 現在進行形で女たちに同じことが行われている この現実もディストピアなんだろう。


この作品は
【小説】
マーガレット・アトウッド/侍女の物語
村田基/フェミニズムの帝国
貴志祐介/新世界より

沼正三/家畜人ヤプー
【マンガ】
玉井雪雄/オメガトライブ
【映画やドラマ】
Netflix 軽い男じゃないのよ(映画)
Netflix 男らしさという仮面(ドキュメンタリー)
Hulu 侍女の物語(ドラマ)
が好きな人や
普段から男らしさ/女らしさってなんだろう?などジェンダーに関心がある人には特にドンズバだと思われるよ。
Netflixでドラマ化されないかな〜〜(Netflix頼み)

⚠️ネタバレ込みの感想
最強の戦士だったロクシーのスケインが“そうしたほうがいいと思ったから”という父親の考えで無理やり奪われて弟に移植されたシーン、
姉のほうが勉強できるのに姉は家から出してもらえずに家事介護要員にされて 弟の方を大学にいかせるという話や女性天皇制をめぐる問題を連想させた。